工場・製造の仕事は、変化の時代がやってきています。これまで人手を必要だった作業がロボットに置き換わりつつあり、いわゆる「ライン作業」のような単純作業の仕事が減ってきています。
「工場の仕事は、もうなくなるのかな」
こう思うかもしれませんが、実際のところ、工場の仕事はまだあります。ロボットが登場しても、今度は「ロボットの点検」をする人が必要で、この仕事を「設備保全」といいます。
設備保全の仕事は、ロボットが増えるにつれて多くなることが予想されます。今から経験を身に着けておくと、「経験・スキルのある人」として有利になります。
設備保全は、生産設備を正常に動かす仕事!未経験からでもOK
設備保全は、生産設備やロボットを正常に動かす仕事。
工場の生産設備やロボットは、自動で作業を進めてくれるありがたい存在。ただ、ときには何か異常が起きて止まってしまったり、正しく動かなくなってしまったりすることがあります。
こうしたときは、設備保全スタッフの出番。何が原因で止まってしまったのかを突き止めて、必要な対策をとります。
トラブルの原因はなかなかわからないこともありますが、多くの場合は「よくあるエラー」。設備やロボットの画面に「エラー205 ◯◯を正しくセットしてください」のような形で表示されるため、マニュアルに沿って対処すれば良いです。
また、生産設備やロボットはほとんど自動で動くものの、材料のセットや準備を整えてからの再スタートは、人が操作しないといけません。これも設備保全スタッフの仕事で、決められた手順で機械を動かします。
設備保全の仕事はこのように、決まった作業が多いです。もちろん最初は設備やロボットの操作方法を理解して動かせるようになる必要があるものの、マニュアルややり方があるため始めやすい仕事。
ちなみに設備保全の業務は病気と似ていて、予防にあたる「予防保全」と、かかってしまった病気の治療にあたる「事後保全」があります。
【予防保全】の仕事
時間基準保全:「6ヶ月ごとにオイル交換」のように、トラブルが起きる前に一定期間が経ったら部品を交換する予防方法。
状態基準保全:「オイルが茶色くなったら交換」のように、部品などの状態が基準を下回ったら交換する予防方法。
【事後保全】の仕事
機能停止型故障:設備が突然止まってしまう故障。
機能低下型故障:だんだん動きが鈍くなるなど、性能が低下する故障。
詳しいことは仕事を始めてから理解すれば良いため、転職前は「そういうものなんだ」というくらいで大丈夫です。
また、設備保全の仕事はこれまで、「保守・点検・メンテナンス」のように呼ばれるのが一般的でした。ですが自動化・ロボットが広まることであらためて大切な仕事と考えられるようになり、「設備保全」と呼ばれることが増えてきました。
求人は派遣と正社員どちらもある。希望に合わせて選ぼう
設備保全の仕事は2021年現在、派遣と正社員どちらも求人があります。自分の希望に合わせて選ぶと良いです。
派遣なら時給が高く、短期間でもしっかり稼げます。仕事も簡単なものが多いため、正社員にこだわらないなら派遣も良いです。
正社員は派遣よりも安定して働きやすく、経験を積むとより幅広い仕事ができます。製造・生産技術・品質管理のような部署と連携して仕事をすることも多く、ものづくりや技術の面白さ・やりがいを感じられるはず。最初は派遣よりも給料が低めかもしれませんが、安定していて経験・スキルに合わせて給料が上がるのもメリットです。
設備保全のメリット3つ
ここまでの仕事内容を踏まえて、設備保全のメリットを紹介します。これまでの製造の仕事と違うところもあるため、考えてみる価値はあります。
【設備保全のメリット!】
- 基本的な仕事が決まっていて、未経験でも始めやすい。
- 工場・製造の仕事ながら、体力的にラク。
- ロボットやAIが広まる中、これから増える仕事。早く始めると有利。
基本的な仕事が決まっていて、未経験でも始めやすい
設備保全の仕事は、未経験でも始めやすい仕事。その理由は、「操作方法・マニュアルがあるため」です。
設備保全の業務では、「設備のスタート時はこうする」「ロボットが止まってしまったらエラーを確認して、それに合わせてこう対処する」というのが決まっています。
掃除機や洗濯機などの家電には説明書があり、「こんなときはどうする?」というトラブル対処のページがあるはず。
生産設備やロボットもこれと同じでマニュアルがあり、「起きる可能性のあるトラブルと、その対処法」がメーカーによってまとめられています。また、トラブル対処は設備を導入している工場からの相談で更新されていて、だいたいのトラブルはマニュアル対応です。
もちろん最初は研修があり、仕事に必要な知識や作業を教えてもらえます。ただ、基本的なことを理解したら、あとは必要なときだけマニュアルを参照しながら作業すればOK。これから新しく仕事を始めたい人に向いています。
工場・製造の仕事ながら、体力的にラク
工場や製造の仕事は、重いものを持ったり運んだりするイメージがあることも多いもの。ただ、設備保全の場合、大変な力仕事はロボットなどが担当。体力的にラクなのは、大きなメリットです。
工場を長く続けている人の中には、腰を痛めてしまう人や、怪我をしてしまう人がいます。設備保全では「ボタンを押す」「画面で状況をチェックする」「配電盤を確認する」「材料をセットする」などの作業が中心で、これまでの工場勤務より比較的ラクです。
それでも、これからの工場に設備保全スタッフは必要な存在。まさに「新しい製造の仕事」といえます。
ロボットやAIが広まる中、これから増える仕事。早く始めると有利
これからの時代、ロボット化・ITやAI(人工知能)を活用した技術はさらに加速するはず。体や手をひたすら動かすライン工は、だんだん少なくなっていくと予想されます。
ただ、こうした設備やロボットが増えれば、それだけ停止や故障のトラブルも多くなります。設備保全の求人はこれから増える可能性が高いため、今から始めると有利です。
経験豊富な人は、「ぜひうちで働いてほしい」となることが多いもの。
設備保全の仕事は決まった作業が多いとはいえ、技術や生産設備に関する知識、その動かし方やトラブル対処など、さまざまな専門知識・技術を身につけられます。早めに始めて、経験・スキルを身につけるのも良いでしょう。
設備保全の仕事には、デメリットもある
上のようなメリットがある反面、設備保全の仕事にはデメリットもあります。下の3点も確認して、始めるか考えてみてください。
【設備保全のデメリット】
- 常に設備を動かす必要があり、夜勤ありの仕事が多い(夜勤手当はあり)。
- 決まった仕事が多く、人によってはつまらなく感じることがある。
- 大きなトラブルが起きると、急に忙しくなることもある。
常に設備を動かす必要があり、夜勤ありの仕事が多い(夜勤手当はあり)
生産設備やロボットは、24時間で稼働(かどう)させるのが一般的。自動でドンドン製品を作ってくれるため、常に動かすほうが良いためです。
そのため設備保全の仕事も24時間体制で、多くの職場で3交代や2交代勤務。つまり「夜勤」があります。
上で紹介したように、設備保全の仕事は体力をあまり使いません。そのため夜勤といってもまずまずラクですが、夜に起きている必要があるだけでも最初は大変。夜型なら問題ないかもしれませんが、朝型の場合は大丈夫か確認しておきましょう。
ちなみに夜勤は最初のうちはキツイですが、2週間〜1ヶ月もすると慣れてきます。夜勤で働くと夜勤手当で稼げるため、夜型なら意外とメリットかもしれません。
決まった仕事が多く、人によってはつまらなく感じることがある
設備保全の仕事は、体力の面はこれまでの工場勤務と大きく違いますが、「決められたことをこなす」という意味では同じ。人によっては飽きることがあります(汗)
また、設備やロボットが順調に動いているときは、「ときどき画面をチェックすればいい」ということもあります。材料の搬入作業などほかの仕事がある場合もありますが、職場によっては時間がけっこうあることも。
もちろん「安定して働ければ、それで十分」という人には良いですが、特に派遣で働く場合、「仕事を通して新しいことを身に着けたい」という場合には不向きかもしれません。
大きなトラブルが起きると、急に忙しくなることもある
基本は比較的ラクな設備保全の仕事。ただ、「職場で起きたことがないトラブルが起きた」「対処した経験のあるスタッフがいない」のような場合、急に忙しくなることも。
この場合、ほかの人とも協力して、場合によっては設備を販売しているメーカーや休み中のスタッフに電話するなどして、何とか乗り切ることになります。よくあることではないものの、かなり大変な疲れることもあるため、こういうこともあることは頭に入れておきましょう。
ただ、普段は落ち着いて働けることが多いため、トータルで見ればやはり設備保全は考えてみるのも良い仕事です。
設備保全の仕事が向いている人
ここまで紹介したメリット・デメリットを踏まえて、設備保全の仕事が向いているのは次のような人です。
【設備保全の仕事が向いているのはこんな人】
- ものづくりに関わる仕事がしたい人
- 生産設備・ロボットの操作に興味がある人
- 夜勤が大丈夫な人
- 同じ作業を飽きずにこなせる人
- トラブル対処・機械の修理ができる人(できれば)
これまでの工場勤務や期間工と違い、体力があまり必要ないのは大きなポイント。設備保全はより多くの人に向きやすく、男性だけでなく女性や年齢の高い人にも良い仕事です。
設備保全はこれからの転職や仕事探しにもおすすめ!
設備保全は、自動化やロボット化が進むこれからの時代、ますます大切になる仕事。高性能なロボットでも故障することはあるため、定期的な状態チェックやトラブルが起きたときの対処ができる人は必要。今から始めてみるのもおすすめです。
設備保全の求人はこれから増えるとはいえ、これまであった製造スタッフのような数はないと予想されます。興味がわいたら、ぜひ求人をチェックしてみてほしいと思います。