製造業の中でも少し特殊な仕事に、「技術営業(セールスエンジニア)」という職業があります。これは「理系的な知識が必要な商品・サービスの営業」のこと。
技術営業は理系と文系の中間的な仕事で、実はできる人が少ない仕事。「自分は理系だから製造や開発」、「文系だから理系の難しいことはわからない」のように偏る人が多いため、両方の知識が必要な技術営業は人気が低いのです。
ただ、技術営業は需要があるため、高収入も狙える仕事。転職で考えてみるのもオススメです。
ここでは「技術営業への転職」について解説します。
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技術営業(セールスエンジニア)は、理系の知識を元にセールスをする仕事
営業といえば文系の仕事というイメージがありますが、自動車部品・生産設備・金型・新素材・新しい化学原料などの製品ももちろん営業が販売します。こうしたものは機械・電気・物理・化学など、理系的な知識がないと上手く説明や提案ができません。
- 「ちょっと技術の者に確認しますね」
- 「それについては、えっと・・、おそらく大丈夫です!」
技術の知識がないとこんな営業になることがあり、契約に結びつきにくいです。
技術営業なら下のような感じで、データ・根拠を元に提案することができます。
- 「こちらに耐久性のデータがありますが、御社の用途なら十分かなと思います」
- 「タクトタイムが短く、御社の現状よりも良くなるので、より効率よく生産できますね」
上はシンプルな例ですが、技術営業なら専門知識を元に、より細かな提案ができます。すると相手が「なるほど」と感じて、信頼してくれやすくなります。
文系出身の人が技術の勉強をして、部品や生産設備の提案をすることもあります。ただ、やはり大学で専門的に学んだ人とそうでない人の差は大きく、話す内容の厚みが違うもの。技術営業は、やはり理系的な知識をしっかり学んだ人向けの仕事です。
ちなみに技術営業とセールスエンジニアの違いはあまりなく、ほぼ同じ意味で使われることが多いです。
エンジニアは営業が苦手な人が多く、技術営業は貴重な存在
技術営業になれる人は現状、貴重な存在です。その理由は、「多くの人は理系か文系、どちらかに偏るため」です。
文系出身の営業だと知識の勉強が難しく、製造・開発・品質管理などの人はコミュニケーションを苦手とする人が多いです。理系の人は普通に会話できても営業スタッフのような清潔感はなく、いわゆる「カタい雰囲気」になることがよくあります。
そのため文系の営業と同じような雰囲気があり、かつ技術の話もできる技術営業は、できる人が少ないのです。
技術営業は高収入も狙える!450〜550万円ほどが一般的で、成果を伸ばせば800万円や1,000万円も
技術営業への転職で気になるのは、やっぱり年収だと思います。
技術の知識があって営業ができる人は、大手や準大手の企業でも需要が高いです。こうした会社に転職できれば450〜550万円くらいは十分狙えて、成果をコンスタントに上げれば年収800万円や1,000万円も狙えるはず。
管理人は伊藤忠の技術営業さん(20代後半)と仕事でよく話していましたが、具体的な金額は聞いていないものの、収入は高そうでした。。伊藤忠の営業を調べてみると1,000万円を超えることも多いようなので、転職で考えてみるのはかなりアツイと思います。
あと、最近はよく知られてきたキーエンスの営業さんも、光学顕微鏡の提案によく来ていましたが、キーエンスの技術営業も相当良さそうです。おそらく年収1,000万円のチャンスは十分あるでしょう。
技術営業は製造や設計・開発のスタッフほどまで深い専門知識は必要なく、「技術を理解できるバックグラウンド的な知識」があれば良いです。製造エンジニアとして実務経験があればなお良いですが、「メーカーに入ったけど辞めてしまった」というような第二新卒の人でもチャンスはあるはずです。
ノルマが課される会社は多い。大手は大変な場合もあるので注意
技術営業は高収入も狙える仕事ですが、逆にデメリットもあります。それは「ノルマがある」ということ。
技術営業は「営業」なので、製品を売ることが仕事。「売上額」や「契約数」が自分の成績として評価され、それによって給料が変わります。
大手企業は売上をシビアに考えるため、ノルマもしっかり管理されることがほとんど。ただ、大手なので販売はしやすく、営業スキルがあまりなくても売れることはあります。
もしノルマに不安があるなら、大手ではなく中小企業の技術営業を狙うほうが良いかもしれません。会社によって評価の仕方は違うため、面接で話を聞いて納得できる会社を選びましょう。
まあ、仕事はどんなものでも大変なことはあるので、「大手に転職できる可能性があり、頑張りに見合う収入が得られる」という技術営業は考えてみる価値のある仕事だと思います。今の時代、「ノルマはないけど、収入はずっと低空飛行」というところもよくありますからね。
技術営業が向いている人、必要な能力・スキル
技術営業が向いているのは、次のような人です。
【技術営業が向いている人】
- もともと製造や研究・開発などで働いていた人
- 営業に抵抗がない人
- 人とのコミュニケーションが好きな人
- スーツで働くことに憧れる人(笑)
- 第二新卒などで技術の知識・経験が中途半端だけど、大手に転職したい人
まとめると、「理系だけど、営業もいいと思える人」です。
技術営業は考え方によっては、「中途半端な仕事」ではあります。理系出身のためバリバリの営業マン的な雰囲気はない人が多く、製造や開発だけをしてきた人に比べて専門知識は劣るもの。ただ、この中間的な能力を、上手く活かせる仕事といえます。
また、仕事をする中では、次のような能力・スキルが必要。最初から全て完璧にできる必要はありませんが、仕事を通して意識して学んでいくと良いです。
【技術営業に必要な能力・スキル】
- コミュニケーション能力
- セールストーク
- 製品知識
- 製品に関連する技術の知識
- マーケティングスキル
技術営業の良いところは、「1度売れるようになると、製品が変わっても売れる」ということ。
売るものが違っても、販売するまでのプロセスは似ています。「営業先の担当者とコミュニケーション → ニーズのヒアリング → 製品の提案 → クロージング → 契約」のような流れで進むため、この流れを身につけるとどんな企業からも必要とされる人材になります。
英語は必須でないが、スキルがあると転職で有利
大手や準大手のメーカーは特に、海外にもビジネス展開していることが多いです。技術営業も英語ができると、海外で活躍できる可能性があります。必須ではありませんが、身につけていると面接でかなり有利。それが決め手で採用が決まることもあります。
また、技術営業は売れるようになると製品が変わっても販売できるため、より実力重視の外資系企業に転職するのも良いかもしれません。外資系は結果が求められるものの、その分だけ収入は高くなります。チャレンジする気持ちがあるなら、ぜひ考えてみてください。
技術営業のキャリア
技術営業は、一般的な営業と似たキャリアになります。
「プレーヤーとして営業活動 → マネージャー → 部長職」のような流れでステップアップします。個人のプレーヤーとしても年収1,000万円超えは可能ですが、より自分のスキルを高めるなら、チームとして結果を出すマネージャーになることを考えるのも良いでしょう。
また、「準大手企業のプレーヤー → 大手企業のプレーヤー → マネージャー」のようなキャリアもあります。
最初から大手に転職するのが難しそうなら、まずはデンソー・リコー・ミスミのような、少し狙いやすい準大手企業への転職を考えると良いです(十分大きいですが)。そこで結果を出したら、ダイキン・住友化学・キーエンス・パナソニック・ソニー・ヤマザキマザックなど、大手企業へあらためてチャレンジするのも良いでしょう。
転職に必要なものは、「転職先企業に関連する専門知識」と「営業」
技術営業へ転職するときに準備することは、大きく分けて3つ。
- 志望動機
- 前職の退職理由
- 自己PR
志望動機は、「技術営業と企業のどこに魅力を感じたか?」を考える
志望動機は「技術営業のこんなところに魅力を感じた」「技術営業をするなら、御社でやりたい。なぜなら・・」というイメージで考えてください。
技術営業の魅力は、「理系の知識を活かしながら、営業として働ける」「自分の頑張りが、成果に反映されやすい」というところです。これを自分の言葉で伝えましょう。
【志望動機の例文】
退職理由は「エンジニアとして働く中で、営業に興味が湧いた」のように前向きなニュアンスで
面接では志望動機と合わせて、「前職の退職理由」もよく聞かれます。
退職理由は「人間関係が悪かったため」「給料が安かったため」「激務だったので」のような、マイナスの内容はNG。必ず前向きなニュアンスで伝える必要があります。
技術営業の場合、「今後のキャリアを考える中で、技術営業に興味が湧いた」という感じで伝えると良いです。
【退職理由の例文】
自己PRは「技術面」をアピール。営業向きかは雰囲気で自然にわかる
最後に自己PRもよく聞かれますが、「技術の知識や経験」をアピールしましょう。
- これまでプロジェクターの開発担当として、5年間勤務してきました。
- 医療機器の製造を行い、生産設備のオペレーションを担当していました。
- 機械・設計は専門分野ですが、電気や化学についてもある程度知識があります。
技術に関する知識は、技術営業として必要不可欠。「今まで何をしてきて、どんな知識・経験があるか」を伝えましょう。
自己PRとして「コミュニケーションに自信があります」「人と接することが好きで、明るい性格です」のように伝える人もいますが、話し方や雰囲気からある程度わかります。
スーツをビシッと着て、身だしなみを整えて清潔感のある雰囲気で明るく話せば、「営業としてやっていけるな」と判断してもらえます。
「コミュニケーションに自信があります」のように伝えると、逆に「漠然としてるね」「それしかないの?」と思われることもあるため気をつけましょう。
技術営業へ転職するのにオススメの転職エージェント!
技術営業に転職するなら、「転職エージェント」を使うのが近道。転職エージェントは登録すると担当のスタッフがついて、求人の提案や書類作成・面接のサポートをしてもらえます。
特にこれまでと大きく仕事を変える場合、何かとわからないこともあるもの。転職エージェントは「転職のプロ」なので、自分が思っていなかった求人を紹介してくれたり、「なるほど」というようなアドバイスをもらえたりします。
転職エージェントは無料で利用でき、絶対に転職しないといけないわけではありません。情報収集も兼ねて、まずは相談してみてほしいと思います。
技術営業への転職にオススメのサービスを3つ紹介します。
大手から中小まで、技術営業の求人が豊富!「リクルートエージェント」
まずオススメなのは、知っている人も多い大手の「リクルートエージェント」。大手のリクルートが運営しているサービスで、大手メーカーから中小企業まで求人が豊富。転職ノウハウも充実していて、安心してサポートしてもらえます。
技術の知識や経験がしっかりあれば、限定的な案件の「非公開求人」も紹介してもらえる可能性があります。大手企業、有名企業に転職できるチャンスも十分あるので、期待してみてください。
製造業専門のサービスで、スタッフも信頼できる「メイテックネクスト」
次のオススメは「メイテックネクスト」という転職エージェント。あまり聞いたことがないかもしれませんが、珍しい「製造業専門の転職エージェント」として運営されています。
製造業に特化しているため、技術営業の求人もしっかり確保。「セールスエンジニア」としてひとつの求人カテゴリーになっているのはさすがです。スタッフも技術の知識がわからない人はおらず、状況やスキルをしっかり把握してサポートしてくれます。
これまでに製造業での経験があるなら、メイテックネクストは使いやすいはず。大手メーカーの面接会や選考会も募集されているので、参加してみるのも良いと思います。
第二新卒にもオススメな、大手の転職エージェント「マイナビエージェント」
最後はリクルートと並んで大手の「マイナビエージェント」。こちらも求人が豊富でスタッフの実力も高く、大手ならではの手厚いサポートを受けられます。スタンダードなエージェントとして使いやすいはず。また、マイナビエージェントは第二新卒に強いイメージもあるため、20代の転職にもピッタリです。